治具設計シリーズ【第2|10回】 治具設計の基本 ― “使われる治具”と“捨てられる治具”の決定的な違い ―
現場の悩み
町工場の現場で、こういう経験はないでしょうか。
お金と時間をかけて治具を作ったのに使われない
結局、現場は元のやり方に戻る
改善のつもりが逆に手間が増える
経営者の立場から見ると
「投資したのに効果が出ない」
という最も避けたい状態です。
しかし現場では
なぜ失敗したのか分からない
次も同じ失敗を繰り返す
というケースが非常に多いのが実情です。
問題の原因
治具設計が失敗する原因は、ほぼ共通しています。
① “モノ”から設計している
形状から考える
とりあえず固定するものを作る
これは
設計ではなく工作です。
② 作業分析がされていない
どこにムダがあるのか
どこでミスが起きるのか
が不明確なまま設計すると
効果が出ない治具
になります。
③ 現場のリアルが入っていない
作業者の癖
スペース制約
動線
が考慮されていないため
机上の空論の治具
になります。
解決方法(技術解説)
治具設計には
失敗しないための“5つの設計原則”
があります。
① 目的を数値で定義する
「楽にする」ではなく
作業時間 30%削減
不良率 半減
など
成果を数値化すること
が重要です。
これにより
投資判断ができる治具
になります。
② 位置決めを最優先に設計する
治具の精度は
位置決めで100%決まる
と言っても過言ではありません。
基準面の設定
3点拘束
ガタの排除
ここを曖昧にすると
全てが崩れます。
③ “1動作化”を目指す
良い治具は
置く・押す・終わり
です。
悪い治具は
調整が必要
確認が必要
つまり
人の判断が必要
です。
④ 作業者の動きを設計する
治具は
人の動きの延長線上にあるべきもの
です。
持ち替えがない
無理な姿勢がない
視線移動が少ない
これができると
教育なしでも使える治具
になります。
⑤ “ズレる前提”で設計する
現場では
ワーク誤差
温度変化
設置ズレ
が必ず発生します。
そのため
逃げ設計
微調整機構
を入れることで
現場で生きる治具
になります。
実際の事例
ある中小メーカーで、組立工程に時間がかかっていました。
従来は
手で位置合わせ
ボルト仮締めしながら調整
という状態でした。
改善として
基準ピン+受け構造を設計
ワークを置くだけで位置決め完了
としました。
結果
作業時間 40%短縮
新人でも作業可能
となり
教育コスト削減+生産性向上
を同時に実現しました。
技術者の視点(設計思想)
治具設計で重要なのは
「人を信用しない設計」
です。
これは決して否定ではなく
人はミスをする
状態は変化する
という前提に立つということです。
その上で
ミスが起きない構造を作る
のが設計者の役割です。
暗黙知の形式知化の重要性
現場のベテランは
感覚で合わせる
音や手応えで判断する
ことができます。
しかしこれは
再現できない技術
です。
治具はこれを
形状
機構
として再現することで
会社の資産に変える手段
になります。
トヨタの「自工程完結」の考え方
治具は
品質を“後で検査する”のではなく
“その場で作る”ための道具
です。
不良を作らない
次工程に流さない
これにより
全体最適の生産体制
が構築されます。
トヨタの品質設計(FMEA)の考え方
治具設計では
「どこで失敗するか」を先に考える
ことが重要です。
ズレる
入れ間違える
固定不足
これらを
構造で潰す
ことが
プロの設計です。
まとめ
治具設計の本質は
作業を設計し、利益を生むこと
です。
重要なポイントは
目的を数値化する
位置決めを最優先
1動作化する
人の動きを設計する
ズレを前提にする
そして
“使われるかどうか”が全て
です。
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