現場の悩み
町工場や中小メーカーの現場では、次のような相談が珍しくありません。
古い設備の部品が壊れた
メーカーに問い合わせたが「部品供給終了」と言われた
図面が残っていない
現物しかない
特に設備導入から20年以上経過している場合、図面が存在しない部品は珍しくありません。
昔は紙図面で管理されていたため、設備更新や担当者の異動、保管場所の変更などで図面が失われてしまうケースが多くあります。
現場ではこのような状況になると、よく次の言葉が出てきます。
「図面がないと部品は作れないのでは?」
設備が止まれば、生産ラインも止まります。
特に中小メーカーでは設備1台の停止が大きな損失につながることもあります。
しかし結論から言うと、図面がなくても部品を再製作できるケースは多くあります
そのためには、単なる加工ではなく設計の視点で部品を復元することが重要になります。

問題の原因
図面がない部品の問題が発生する背景には、町工場や中小メーカー特有の事情があります。
主な原因は次の3つです。

① 設備図面の管理不足
古い設備では、図面管理の仕組みが整っていないことがあります。
紙図面のまま保管されていたり、設備導入時の資料が整理されていないケースも多く見られます。
その結果、設備が故障したときに図面が見つからないという問題が発生します。

② 設備メーカー依存
設備メーカーが設計情報を管理している場合、ユーザー側には詳細図面が残っていないことがあります。
しかし設備メーカーが
事業撤退
部品供給終了
設備の旧型化
などの理由で対応できなくなると、部品入手が困難になります。

③ 技術の属人化
設備の構造を理解しているベテラン技術者が引退すると、設備に関する知識も失われてしまいます。
「昔は○○さんが全部分かっていた」
という話は、町工場ではよく聞く話です。
このように
設備はあるのに部品が作れない
という状況が発生してしまいます。

解決方法(技術解説)
図面がない部品でも、現物が存在すれば設計情報を読み取ることが可能です
この方法は一般的に
リバースエンジニアリング(逆設計)
と呼ばれています。
具体的には次のような工程で進めます。
現物部品の分解
寸法測定
構造の理解
CADで図面作成
部品製作
このように
現物 → 設計データ → 製作
という流れを作ることで、図面がない部品でも再製作できる場合があります。
最近では
3D CAD
3Dスキャナー
デジタル測定技術
などを活用することで、より正確に部品形状を取得できるようになっています。
つまり図面がない部品でも、設計情報を再構築することで製作可能になるケースが多いのです。

実際の事例
ある中小メーカーの工場で、搬送設備のガイド部品が摩耗して設備が停止しました。
設備は約30年前に導入されたもので、図面は残っていませんでした。
メーカーに問い合わせましたが、すでに部品供給は終了していました。
そこで現物部品を取り外し、寸法測定を行いました。
さらに設備全体を確認しながら、部品の役割や構造を整理しました。
その後3D CADで図面を作成し、部品を再製作しました。
結果として設備は復旧し、現在も問題なく稼働しています。
このように図面がなくても設備を復旧できるケースは少なくありません

技術者の視点(設計思想)
図面がない部品の問題に対して、
「図面がないから作れない」
と判断されることがあります。
しかし設計の視点では
現物が存在するということは、そこに設計情報がある
とも言えます。
例えば
寸法
形状
材料
構造
これらの情報は現物の中に存在しています。
重要なのは、それを設計情報として整理することです。
この考え方がリバースエンジニアリングの基本になります。

暗黙知の形式知化の重要性
町工場の現場では、設備の知識がベテラン技術者の経験に依存していることがあります。
しかし技術が人に依存すると
技術者の引退
担当者の異動
情報共有不足
などの問題が発生します。
そのため重要なのが
暗黙知を形式知にすること
です。
例えば
図面化
3Dデータ化
設備部品リスト作成
などです。
設備情報を整理しておくことで、将来のトラブル対応が大きく改善します。

トヨタの「自工程完結」の考え方
製造業では
品質は工程で作り込む
という考え方があります。
トヨタ生産方式の「自工程完結」も、この思想に基づいています。
各工程が責任を持って品質を作り込むことで、問題を次工程に流さない仕組みです。
設備部品についても同様で
図面を残す
設備情報を整理する
設計意図を明確にする
といった取り組みが、設備トラブルの防止につながります。

まとめ
図面がない部品でも
現物測定
リバースエンジニアリング
デジタル技術
などを活用することで再製作できる場合があります。
古い設備を長く使うためには
設備構造を理解すること
技術情報を残すこと
設計データを蓄積すること
が重要になります。
設備トラブルを単なる修理で終わらせず、技術として蓄積することが町工場や中小メーカーの競争力につながります。
次回の記事では、図面がない部品を実際に作るための具体的な方法について解説します。

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