図面がない部品シリーズ【第2|10回】 図面がない部品を作る3つの方法 ― 現物しかない設備部品を再製作する実践技術 ―
現場の悩み
前回の記事では、「図面がない部品でも再製作できるケースは多い」という話をしました。
しかし現場では、次のような疑問が出てきます。
図面がない部品は、実際にはどうやって作るのか
どこから手を付ければよいのか分からない
加工業者に相談しても「図面がないと難しい」と言われる
特に町工場や中小メーカーでは、設備の老朽化が進んでおり、
搬送設備
専用機
治具装置
などの古い設備部品の復元が必要になる場面が増えています。
しかし図面がない状態では、どのように部品を作ればよいのか分からず、設備が止まったままになるケースもあります。
実際には、図面がない部品でもいくつかの方法を組み合わせることで再製作することが可能です。
今回は、現場でよく使われる3つの方法について解説します。
問題の原因
図面がない部品の製作が難しいと感じる理由は、主に次の2つです。
① 設計情報が存在しない
通常の部品製作では
図面
材料
公差
などの設計情報をもとに加工を行います。
しかし図面がない場合、設計情報が存在しない状態からスタートすることになります。
そのため単純な加工ではなく、設計情報を復元する工程が必要になります。
② 部品の役割が分からない
機械部品には必ず役割があります。
例えば
回転する部品
位置決め部品
荷重を受ける部品
などです。
この役割を理解しないままコピーすると、正しく機能しない部品になる可能性があります。
そのため図面がない部品の製作では、設計視点での分析が重要になります。
解決方法(技術解説)
図面がない部品を再製作する方法は、大きく分けて次の3つがあります。
方法① 現物測定による図面復元
最も基本的な方法が、現物部品を測定して図面を作る方法です。
壊れた部品や摩耗部品を測定し
寸法
形状
取付位置
などを整理して図面化します。
測定には主に次の工具が使用されます。
ノギス
マイクロメータ
高さゲージ
三次元測定機
比較的シンプルな機械部品であれば、この方法で十分対応できます。
町工場の設備部品の多くは、この方法で復元されています。
方法② リバースエンジニアリング
次の方法が、リバースエンジニアリング(逆設計)です。
これは単にコピーするのではなく、部品の役割や構造を分析して設計を再構築する方法です。
例えば
摩耗しやすい部分の材料変更
強度不足の改善
加工しやすい形状への変更
などを検討します。
そのため単なる部品コピーではなく、設備の信頼性を向上させる設計になる場合もあります。
特に古い設備では、この方法が有効です。
方法③ 3Dスキャンによるデジタル化
最近増えているのが、3Dスキャナーを使った形状取得です。
3Dスキャナーを使うと、部品の形状をデジタルデータとして取得できます。
この方法は特に次のような部品で効果を発揮します。
複雑な曲面形状
鋳物部品
摩耗形状の確認
取得したデータをもとに
3D CADモデル作成
図面作成
部品製作
という流れで復元します。
近年はデジタル技術の発達により、図面復元の精度とスピードが大きく向上しています。
実際の事例
ある中小メーカーの工場で、搬送設備のガイド部品が摩耗して設備が停止しました。
設備は約30年前のもので、図面は残っていませんでした。
メーカーに問い合わせても、部品供給はすでに終了していました。
そこで現物部品を取り外し、
寸法測定
構造確認
CAD図面作成
を行いました。
さらに摩耗原因を確認すると、材料強度に改善の余地があることが分かりました。
そこで材料を変更し、部品を再製作しました。
結果として設備は復旧し、以前よりも長寿命の部品になりました。
このように、部品を復元するだけでなく設備を改善できるケースもあります。
技術者の視点(設計思想)
図面がない部品の製作では、単純なコピーではなく
設計を理解すること
が重要になります。
例えば
どこが基準面なのか
どの寸法が重要なのか
どこに荷重がかかるのか
こうした情報を理解することで、正しい部品を作ることができます。
つまり図面復元とは、設計を読み解く作業でもあります。
暗黙知の形式知化の重要性
町工場の現場では、設備の知識がベテラン技術者の経験に依存していることがあります。
しかし技術が人に依存すると
技術者の引退
担当者の異動
情報共有不足
などの問題が発生します。
そのため重要なのが
暗黙知を形式知にすることです。
例えば
図面作成
3Dデータ化
設備部品リスト作成
などです。
設備情報を整理しておくことで、将来のトラブル対応が容易になります。
まとめ
図面がない部品でも、次の3つの方法で再製作できる場合があります。
現物測定による図面復元
リバースエンジニアリング
3Dスキャンによるデジタル化
古い設備を長く使うためには、設備部品を設計情報として管理することが重要になります。
設備トラブルを単なる修理で終わらせず、技術として蓄積することが町工場や中小メーカーの競争力につながります。
次回の記事では、現物しかない部品を図面化する具体的な手順について解説します。
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