現場の悩み
町工場や中小メーカーの設備保全では、ある日突然次のようなトラブルが発生することがあります。
古い設備の部品が破損した
部品メーカーに問い合わせても「供給終了」と言われた
図面も残っていない
設備が止まり、製造ラインが停止してしまった
このような状況では、「部品を再製作するしかない」という判断になることが多いですが、実際には次のような疑問が出てきます。
どのような手順で部品を作ればよいのか
どこから手を付ければよいのか
加工業者にいきなり相談してもよいのか
図面がない部品の再製作では、いきなり加工に入るのではなく、設計情報を整理する工程が必要になります。
今回は、図面がない部品を再製作する際の実際の流れについて解説します。

問題の原因
図面がない部品の再製作が難しくなる原因は、主に次の2つです。

① 加工から考えてしまう
多くの現場では、トラブルが起きると
「この部品を作ってほしい」
と加工業者に相談するケースがあります。
しかし図面がない場合、加工業者としては
寸法が分からない
材料が分からない
公差が分からない
という状態になります。
つまり加工の前に設計工程が必要になります。

② 設備全体を見ていない
機械部品は単体で存在しているわけではなく、設備の中で機能しています。
そのため部品だけを見て製作すると
取り付けできない
動作が合わない
寿命が短い
などの問題が発生する可能性があります。
図面がない部品を再製作する場合は、設備全体を理解することが重要です。

解決方法(技術解説)
図面がない部品を再製作する場合、一般的には次の流れで進めます。

① 設備と部品の役割を確認する
最初に行うのは、部品の役割を確認することです。
例えば
回転部品なのか
ガイド部品なのか
荷重を受ける構造部品なのか
役割を理解することで
重要寸法
材料
強度条件
などを整理することができます。

② 現物部品の測定
次に、現物部品の測定を行います。
測定では
外形寸法
取付位置
穴位置
軸径
などを確認します。
摩耗がある部品の場合は
複数箇所の測定
摩耗していない部分の確認
などを行い、本来の寸法を推定します。

③ 図面・3Dデータの作成
測定結果をもとに
2D図面
3D CADデータ
を作成します。
この工程では
材料
表面処理
公差
などの設計情報も整理します。
ここで初めて製作可能な設計データが完成します。

④ 加工・製作
設計データが完成したら、加工工程に進みます。
加工方法は部品によって異なりますが、主に次のような方法があります。
旋盤加工
フライス加工
板金加工
溶接構造
設備部品では、比較的シンプルな加工で対応できるケースも多くあります。

⑤ 設備への組付け・確認
部品が完成したら、設備に組み付けます。
このとき確認するポイントは次の通りです。
取付精度
動作確認
異音や振動
必要に応じて微調整を行い、設備を復旧させます。

実際の事例
ある中小メーカーの工場で、搬送装置のガイド部品が摩耗して設備が停止しました。
設備は約30年前のもので、図面は残っていません。
部品メーカーにも確認しましたが、すでに生産終了していました。
そこで次の手順で対応しました。
設備構造の確認
現物部品の測定
CAD図面の作成
新しい部品の製作
さらに原因を分析すると、材料強度に余裕がないことが分かりました。
そこで材料を変更し、強度を改善した設計に変更しました。
結果として設備は復旧し、以前よりも耐久性の高い部品になりました。
このように図面復元は、単なるコピーではなく設備改善につながるケースもあります

技術者の視点(設計思想)
図面がない部品の再製作では
コピーではなく理解が重要
です。
設計では
なぜこの形状なのか
どの寸法が重要なのか
どこに荷重がかかるのか
を理解する必要があります。
この視点があることで、単なる再製作ではなく設備の信頼性を高める設計になります。

トヨタの「自工程完結」の考え方
製造業では、品質を確保するために
自工程完結
という考え方があります。
これは
「自分の工程で品質を作り込む」
という考え方です。
図面がない部品の再製作でも同じです。
測定
図面化
製作
それぞれの工程で品質を確認することで、設備トラブルを防ぐことができます。

まとめ
図面がない部品を再製作する基本的な流れは次の通りです。
部品の役割を理解する
現物部品を測定する
図面・3Dデータを作成する
部品を製作する
設備に組付ける
重要なのは、加工から始めるのではなく設計情報を整理することです。
図面がない部品でも、正しい手順で進めることで設備を復旧させることが可能です。
次回の記事では、図面がない機械部品を作る際の注意点について解説します。

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