図面がない部品シリーズ【第4|10回】 図面がない部品の測定方法 ― 現物部品から正しい寸法を読み取る技術 ―
現場の悩み
町工場や中小メーカーの設備保全では、図面がない部品を再製作しなければならない場面があります。
しかし実際に現物部品を前にすると、次のような悩みが出てきます。
どこを測ればよいのか分からない
摩耗している部品をどう測定すればよいのか
測定値が本来の寸法なのか判断できない
測定したが、図面として整理できない
設備部品は長年使用されていることが多く、
摩耗
傷
変形
などがある場合も少なくありません。
そのため単純にノギスで測ればよいというわけではなく、設計視点での測定が必要になります。
今回は、図面がない部品を測定するときの基本的な考え方と方法について解説します。
問題の原因
図面がない部品の測定が難しい理由は、主に次の3つです。
① 摩耗寸法を測ってしまう
長期間使用された部品では、摩耗が発生していることが多くあります。
例えば
シャフト径が小さくなっている
穴径が大きくなっている
接触面が削れている
この状態で測定すると、本来の設計寸法とは異なる値になります。
② 測定基準がない
通常の図面では
基準面
基準穴
基準軸
などが設定されています。
しかし現物部品だけを見ると、この基準が分からない場合があります。
基準がない状態で測定すると、寸法の整合性が取れなくなります。
③ 機能を理解していない
機械部品には必ず役割があります。
例えば
回転を支える部品
位置決めをする部品
荷重を受ける部品
などです。
役割を理解せずに測定すると、重要な寸法を見落としてしまう可能性があります。
解決方法(技術解説)
図面がない部品を測定する場合、次の手順で進めると効率よく正確に測定できます。
① 基準面を決める
最初に行うのは、測定の基準を決めることです。
例えば
取付面
中心軸
基準穴
などです。
設備部品では、多くの場合
取付面
が基準になることが多いです。
基準を決めることで、各寸法を整理して測定することができます。
② 重要寸法を特定する
すべての寸法が同じ重要度ではありません。
機械部品では特に重要なのは次の寸法です。
軸径
穴径
中心距離
取付位置
これらの寸法は、設備の動作や精度に直接影響します。
そのため、優先的に正確な測定が必要になります。
③ 複数箇所を測定する
摩耗がある部品では、1箇所だけ測定すると誤差が大きくなります。
例えばシャフトの場合
先端
中央
根元
など複数箇所を測定します。
その結果から
最大値
最小値
平均値
を確認し、本来の設計寸法を推定します。
④ 測定機器を使い分ける
部品の形状に応じて測定機器を使い分けることも重要です。
主な測定工具は次の通りです。
ノギス
最も基本的な測定工具。外径・内径・段差などを測定できます。
マイクロメータ
軸径などの精密測定に使用します。
高さゲージ
基準面からの高さ寸法を測定できます。
三次元測定機
複雑な形状の部品測定に使用されます。
⑤ 複雑形状は3Dスキャン
鋳物部品や曲面形状が多い部品では、従来の測定方法では時間がかかる場合があります。
そのような場合には
3Dスキャナー
を使用して形状を取得します。
3Dスキャンでは、部品形状をデジタルデータとして取得できるため
3D CAD作成
図面化
形状解析
などを効率よく行うことができます。
実際の事例
ある工場で、搬送設備のローラーシャフトが摩耗していました。
設備は約20年前のもので、図面は残っていません。
現物シャフトを測定すると、直径が場所によって
0.2mm以上摩耗
していることが分かりました。
そこで
摩耗していない部分
ベアリングの型番
はめあい条件
を確認し、本来の設計寸法を推定しました。
その後CADで図面を作成し、新しいシャフトを製作しました。
設備は問題なく復旧し、現在も安定稼働しています。
このように、測定では単純な数値だけでなく設計条件を考慮することが重要になります。
技術者の視点(設計思想)
図面がない部品を測定する際に重要なのは
寸法ではなく機能を見ること
です。
例えば
回転部品 → はめあい精度が重要
位置決め部品 → 中心距離が重要
構造部品 → 強度が重要
このように部品の役割によって、重要な寸法が変わります。
測定とは単なる作業ではなく、設計を読み解く工程でもあります。
暗黙知の形式知化の重要性
町工場の現場では、設備の構造や部品情報が
ベテラン技術者の経験
に依存していることがあります。
しかし担当者が変わると
設備の構造が分からない
部品の情報が残っていない
という問題が発生します。
そのため重要なのが
設備情報の図面化・データ化
です。
測定して図面を作成しておくことで、将来のトラブル対応が大きく変わります。
まとめ
図面がない部品を測定する際のポイントは次の通りです。
基準面を設定する
重要寸法を特定する
複数箇所を測定する
測定工具を使い分ける
必要に応じて3Dスキャンを活用する
図面がない部品の測定は、単なる寸法取得ではなく設計情報の復元作業です。
この技術を活用することで、古い設備でも長く使い続けることが可能になります。
次回の記事では、図面がない部品を再製作する実際の流れについて解説します。
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